食べものが好きだ。

食に興味を全振りした若造サラリーマンによる食ブログ

【外食日記】兄部坊(善光寺下)

こんにちは。


前回申し上げた通り、長野・岐阜旅行の続きでございます。

 

日本を震撼させた台風19号が最接近した九月の某三連休の真っ只中

一歩間違えれば暴挙とも言える強硬策も、結果としては大変充実した2泊3日でした。


初日の夢のような松茸づくしに続いて、今回はさらに長野県北部へ移動して、訪れたのは訪日客にも人気の国宝・善光寺


それも今回は宿坊に泊まって精進料理を頂くという貴重な体験をさせていただきました。


そもそも宿坊とは、宿泊施設を備えたお寺のことで、本来の用途は僧侶や参拝客の宿泊施設。

それが最近では、観光客の行動志向が多様化しつつあることに対応する形で、多くの宿坊で一般客の受け入れが行われるようになりました。


例によって、善光寺近辺にも多くの宿坊が存在する中で、今回伺った兄部坊(このこんぼう)さんは128年の歴史を持つ由緒正しき浄土宗の宿坊とのこと。

名前に冠する「兄」の字は、他宿坊にとってのまとめ役という意味合いも持つそうです。

 

ちなみに、現地の方によると、境内には浄土宗の大本願天台宗大勧進の2つが位置していて、それぞれが無宗派である善光寺を守る役割を担っているんだとか。周辺の宿坊はそれらに由来したものであるため、いずれかの宗派に二分されるんですね。

こうした興味深い話が伺えるのも宿坊ならではの楽しみかもしれません。

 

ということで、まずはやっぱり善光寺さんにお参りをすることに。

よくテレビで見るあのバカでかい本堂も、間近で観るとなお大きく、なんだか圧倒されます。

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※なお、本堂内は撮影禁止ですのでご注意ください。

 

こちらは境内と仲見世の境界にそびえる山門の上から眺めた景色。500円の山門拝観券を購入すると登れます。

善光寺は檀家を持たないせいか、やたらと観覧料が発生します。別にいいけど世知辛いね
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同じ目線から見た本堂は下から見上げたときとはまた違った風情を放ちます。
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山門を後にして突入した仲見世通りは一大観光地・浅草寺もかくやと言わんばかりに賑わっていて、土産物屋さんやカフェといった、日本の寺社仏閣にはお馴染みの類の店々が立ち並んでおります。
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そのまま歩き続けていると、程なくして今回の逗留先、兄部坊さんに到着しました。
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周辺には前述の通り、数多くの宿坊が並んでいるものの、赤く染まった朱門を構えるのはこちらだけ。

歴史の古さを物語るものなのかは不明ですがスペシャル感に心が踊ります。

 

宿坊っていうと禅寺のような、あくまで質素でいかにも修行然とした内装を想像していましたが、掃除は行き届いていてそこはかとないお香の香りがそれらしさを感じさせるものの、一般的な旅館のような趣だったのは意外でした。

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部屋に着くや、善光寺のいわれからお朝事と呼ばれる朝のお坊さんたちの読経修行の見学体験、また宿坊のしきたりなどについての説明を受ける我々一行。

 

中でも特に、宿坊はあくまでお寺に併設された宿泊施設でしかないため、食事や滞在時間を始めとした各々ルールについては各坊で定められたものに従わねばならぬとのこと。

まれに旅館並みのサービスを期待する観光客でもいるのか釘を刺された格好となりましたが、これも宿坊ならではの経験と言えるんじゃないでしょうか。

 

そんなこんなで気を引き締めつつ時間を潰していると、お昼にあれだけ松茸尽くしを頂いたのに長旅のせいか不思議とお腹がすいてきた時刻は17時20分。

さきほどの説明にもあった、夕食のお時間です。

 

なんだか宿坊にありながら暴食じみた食欲に若干の罪悪感モウシワケナサを覚えますが、そんな中で気を取り直して頂いたのは以下の通り。

  • 生麩、椎茸、切干大根、絹さやの炊き合わせ
  • 胡麻豆腐
  • 鰻豆腐
  • じゃがいものなます
  • 湯葉あんかけ
  • 米ナスの田楽
  • そば
  • 炊き込みご飯、がんもどきのお吸い物
  • あんずの葛寄せ

 

精進…っ!!

と思わずつぶやいちゃいそうなレベルで充実したラインナップ。

当然、観光客向けにアレンジされているのかもしれませんが、どれも手を尽くされた心のこもったお味かつ見た目もきれいで、まさしく精進料理の名に恥じないお料理たちでした。

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精進料理の感想をつらつら述べるなんぞ無粋もいいところですが、単なる感想ということでね、ご了承いただければと思います。

 

■生麩、椎茸、切干大根、かぼちゃ、絹さやの炊き合わせ

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その名の通り、具材をそれぞれ出汁で炊き、一つの椀に盛り込んであります。

あくまで薄味であるおかげで、生麩の食感や椎茸の旨味、かぼちゃの甘みなど素材本来の味にかえって集中することができ、なんというか外連味のない味。

道理をわきまえた精進料理のスタンスを、まず認識させてくれた一品でした。

 

胡麻豆腐
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某料理漫画のせいでお坊さんの作る料理の代表というイメージがあるんですが、聞くとやっぱり定番とのことで頂いた胡麻豆腐。

丁寧にゴマを擦らねば得られぬ自然な甘さともっちりなめらかな食感が、舌にも喉にも気持ちよく、心にも美味しいです。ちょこんと添えられたわさびが舌を引き締めてくれてくれるのも嬉しいですね。

 

■鰻豆腐
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豆腐を擦って湯葉で巻き、油で揚げて鰻に似せたこちら、海苔が鰻の皮目をうまく表現していて、見た目は鰻そのもの。

食べてみるとそこまで鰻っぽくはないものの、 蒲焼き風の濃いめの味付けが相性良く、むしろ豆腐それ自体を味わう料理であることに気づきます。あくまで精進料理でありながら、スタミナ料理の代表格でもある鰻に似せるとかいう遊び心を感じさせてくれて、楽しい料理でした。

 

■じゃがいものなます
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なかなか耳慣れぬ料理名ですが、その名の通りじゃがいもの千切りで作ったなますです。

軽く炒ったじゃがいもを甘酢と合わせ、菊花をそえたものとのこと。

しゃくしゃく軽い歯ざわりが穏やかな酸味と合わさって口の中を爽やかにしてくれる、良い箸休めです。下拵えの際に水にしっかり晒したおかげかじゃがいも独特のデンプンくささは無く、小さな小鉢ながらも手間を感じた一品でした。

 

湯葉あんかけ
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擦った山芋を敷き詰めたところに湯葉を並べ、昆布出汁と葛で作ったあんを注いで蒸しあげた茶碗蒸しです。

とろとろの湯葉と山芋の喉越しを楽しんでいるところに、優しい甘さのあんが絡んでどこまでも優しい味わい。

その甘味は砂糖のそれのようなはっきりとしたものではなく、葛や昆布出汁から滲み出る、根菜をじっくり煮出した時のような自然な甘味なので一切のくどさがないのは驚きです。

 

自身を振り返ってみると度々メリハリのある味を是とするような発言をしているけれど、こうした心に染みる滋味深い味わいも大事にしなければいけないなあと痛感させてくれたお料理でした。

 

■米ナスの田楽
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油と茄子の相性の良さは広く知られているところですが、中でも茄子の田楽ときたら鉄板ですよね。

今回頂いたのは信州には珍しく麹が多めの白味噌に柚子を練りこんだ柚子味噌田楽です。トロトロの茄子の甘みを柚子の香りが引き締めてくれて、最後までダレずに美味しく頂けます。

 

例によって、茄子の甘さを引き出すことに注意が払われているため田楽味噌の甘さは控えめ。

全体に言えることですが、足し算ではなく引き算の味付けを徹底されているところは料理好きとしては勉強になる一面ですね。

 

■そば
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あらかた料理も出尽くした頃、土地柄か更科系の白いお蕎麦が運ばれて参りました。薬味にクルミが添えられているところが信州らしい。

蕎麦の香りは強くなく、しゃっきりした歯ごたえは更科系ならでは。

癖がなく喉越しも良いせいか、満腹に近い状態でもペロリと頂けちゃいました。

 

■炊き込みご飯、がんもどきのお吸い物
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最後のお食事として炊き込みご飯とお吸い物を頂きました。いわゆるシメに該当しますが、和会席でいうところの小吸物よろしくといった具合の薄味なので、胃にも優しい平和な締めくくりと相成りました。

 

それでも、油揚げやがんもどきなど、植物性たんぱく質が一定のパンチを与えてくれるので物足りなさは全くないあたりは流石ですね。

付け合わせの信州名物野沢菜がピリッと舌を引き締めてくれて、食べ終わった後のそこはかとない満足感を演出してくれてます。

 

■あんずの葛寄せ
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食後には甘みが欲しくなるのは精進を重ねた坊主も例外ではないようで、最後の最後にデザートが運ばれて参りました。

あんずを甘いシロップで煮たところに葛を加えて固めた、いわば和風ゼリーです。

それでもやはり甘過ぎず奥ゆかしい味わいが、いい加減満腹な胃袋には嬉しいところです。

 

精進料理って正直質素で、全然腹にたまらないんじゃないの、っていう思い込みがあったんですが、とんでもないですね。

めちゃめちゃお腹いっぱいになります。

 

いくら優しい素材使いで身体に優しいとはいえ、こんだけ頂けば満腹もいいところ。身動き取れないほどの満腹感に襲われる様は、まさに凡夫たる悲しさってところでしょうか。

 

食べ過ぎた満足感と罪悪感がせめぎ合っている時刻は19時を回ろうかという頃、聞くところによると、20時からお坊さんによる説法体験ができるとのこと。

 

有難いお札もいただけるっていうし、せっかくだからってんでしばし部屋で休んだのちにみんなで移動し、いざ説法体験。

 

もともと無信心なうえに満腹状態に陥っているぼくにとってはお坊さんの長いお話を正座で聞き続けるというのは地獄というほかなかったけれど、50分間を耐えきってお札を頂いたころにはなぜか不思議な達成感を感じておりました。

 

罰当たりというほかない自分を恥じつつ、お風呂もいただいて気づけば爆睡。

充実した眠りの中、夜は更けていったのでありました。

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そうして迎えた翌朝の起床時間はなんと午前5時。

正気か?と思いつつ叩き起こされて向かったのはこれも善光寺ならではといえるお朝事体験。f:id:shmz_foodlover:20191021212310j:image

 

毎朝行われる浄土宗の住職にあたる上人様を始めとしたお坊さん方の読経を、間近で見学することができる宿坊ならではの体験です。


お経の意味はまったくわからないけど、早朝独特の厳かな雰囲気の本堂で、それも間近で聞くお経はどこか心を落ち着かせてくれました。

起きた当初こそ、寝かせろや…と思わなくもなかったけれど、今では宿坊に滞在される方にはぜひお勧めしたいと思います。

 

お朝事も無事終わり宿坊に戻ると、待ちに待った朝ごはんの準備が整っておりました。

 

昨晩の苦行もとい説法体験と今朝のお朝事が効いているとはいえ、不思議とお腹はすっきり空いていて、精進料理の底力を思い知らされます。

(旅行のたびに言ってるので精進料理のおかげかどうかは微妙だけど気にしない)

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  • 白米
  • ほうれん草の味噌汁
  • 野沢菜胡麻和え
  • 香の物
  • 山芋の千切り
  • 昆布の佃煮
  • 車麩の煮物
  • ふろふき大根

 

主食の白米と一汁三菜、さらに香の物と、和食の基本に忠実な構成にホッとします。

どれも薄味の優しい味付けなのは夕食同様ですが、少しだけ郷愁をより感じるのは、ちっちゃい時から食べてきたような素朴なおかずのおかげでしょうか。

心が温まる嬉しい朝食でした。

 

■車麩の煮物
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焼き麩の一種であり、肉厚なことでも知られる車麩を戻してから昆布出汁で炊いた煮物です。

ずっしりとお肉のような食べ応えもありつつ、噛み締めると美味しいおつゆが溢れてきて薄味ながら食べ応えがあり、優しいラインナップの中にあってパンチが際立ちます。

 

■ふろふき大根
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柚子の香りがする味噌だれを、米のとぎ汁で炊いた大根にかけたお馴染みのふろふき大根。

普段はお酒のつまみでいただくことが多いですが、朝ごはんのおかずとして頂くと荒れた胃に染み入るような、根菜独特の滋味が有難いですね。

 

朝ごはんも美味しく残さず頂いて、いい加減お腹は一杯に。

またもや食べ過ぎて己の学習能力のなさに辟易しつつも、そこはかとない満足感に包まれつつ、宿坊に長居は無用ということで早々に兄部坊さんを後にしたのでした。

 

初めての精進料理体験、ひいては宿坊体験は想像以上に楽しめたひと時でした。

精進などと考える暇もなく、心からお料理を楽しんでしまったのは反省点ですが、それだけ今回頂いた料理たちはエンタメ性にも富んでいた。

 

精進料理というと、肉を使わない料理という程度の認識しかなかったけれども、今では万事森羅万象を慈しみ、敬意を払い、真摯に向き合うというところにコンセプトの核があるんじゃないかなとも思ったりします。

あの手この手で素材の良さを活かそうとしているところからも、そんな印象を受けました。

 

もしも今回、本投稿をお読み頂き、興味が湧いたようでしたら、ぜひ宿坊に泊まって精進料理を召し上がってみてくださいね。

 

ただその際は、あくまで宿坊は宗教施設であり、旅館ではない旨、くれぐれもご留意ください。

 

それでは、本日も駄文をお読み頂き、

ありがとうございました。

 

長野・岐阜旅行記はまだまだ続く

 

 

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